さて、1年遅れの東京2020も無事終了した2021年。
皆さまオリンピックを東京に誘致するために世界に向けて日本が発信したあの言葉を覚えていますか?
滝〇クリステルさんが連日連呼していた、そうあれです。
お・も・て・な・し。
実際のオリンピック開催時にはこの素敵な五文字はそこはかとなく使われていたようないないような。言葉が流行っていた当時は「おもてなしの心で!」とか「日本のおもてなしとは!」とか力説していたコメンテーターたちもすっかり忘れてしまったみたい。
とはいえ、このおもてなしという言葉は私たち日本人にとっては聞き心地がよく、心の拠り所のひとつになっているのも事実です。
ウェディングにおいてもこのおもてなしという言葉はよく出てきます。
新郎新婦にとってゲストをおもてなしするというのはとても大切な心構えですよね。
語源
さて、このおもてなし、知っているようで知らないその語源。
一つは「モノを持って成し遂げる」という説。
持って成す、もてなす?
うーん、何か目標を達成するために画策している感じがします。
もう一つの説が「表裏なし」からきているという説。
「おもてうらなしでお客様を接待する。」とイイ感じです。
この二つの語源について私が推すのは「複合説」。
なんかまたややこしいこと言い始めたなコイツ。と思わすにお付き合いくださいませ。
目的があるからこそ
人が人をもてなす時ってどんな時でしょう。
そこには必ず目的があります。
ビジネスにおいて相手をもてなす時ってどうですか?
「相手をいい気持ちにさせて、こちらの希望を通しやすくする。」につきませんか?
新規取引先の社長をお姉さんのいるお店で接待。
事前にお姉さん達には「今日は大事なお客様なんだ。よろしく頼むよ。」なんて根回し。
予定通りお姉さんと肩を組んでデュエットする社長にむかって「よっ!」なんて掛け声をかけたりします。
「今日はありがとうございました!」
まんまとお姉さんとタクシーに乗り込む赤ら顔の社長に90度の角度で頭を下げる。
「おれ、何やってんだろ。」なんて自問自答しながら。
しかし翌日「今度の取引は御社に頼むことにしました。」なんて連絡が入るとその複雑な気持ちはどこへやら。次は社長をどこのお店に連れていこうかなんて考えます。
今の若い人達が「あほくさ。」とか「あり得ない!」なんて言いそうですね。しかしながら大なり小なりこの「接待」という行為でビジネスの行方が変わることがあるのも事実です。
一方で、遠くからわざわざ遊びに来てくれた友人に対して見返りを求めず「接待」することもありますよね。
「せっかく東京まで来たんだ。六本木あたりで。」と、例によってお姉さんのいるお店へ。
「こいつ、俺の同級生でいいやつなんだ。宜しくね。」とお姉さん達に根回し。
お姉さんとカラオケする友人に「よっ!」なんて突っ込む。
「じゃあ、正月にまた会おう!」
まんまとお姉さんとのアフターにこぎつけた友人のタクシーに手を振り見送る。
楽しい気分で。
やってること一緒やん!
実はここにも「友人を楽しませたい」という目的がありますよね。
もしかすると田舎から遊びにきた友人に「俺ってもうすっかり東京人だもんねー。」と自慢したかったのかも知れません。
「おもてなし」には目的があるのです。
つまり一つ目の説「成す」べきことがあるから「もてなし」なのです。
「ビジネスを制するなら、お姉さんを持って成す。」
「友人を楽しませたいなら、お姉さんを持って成す。」
というわけ。(なんでお姉さんだけ?)
おもてうらなし?そんなわけないでしょ。
私の推しは複合説でした。
もう一つの説である「おもてうらなし」のおもてなし。
いやいや、目的がある以上それは「裏」なのでは?
本当に裏のないおもてなしって「ほどこし」ではないでしょうか?
「心あるボランティアの方が、事情があってお家がない人達に炊き出しをする。」
これは表裏がない行為のような気がします。
が、このボランティアの方が「一人でも多くのホームレスの人たちを救いたい」という大きな目的のためにこの行為を行っているとしたらやはり「裏」があるわけです。
※裏というと悪いたくらみのように聞こえますが、表に出さない事を裏とするならばという話です。
おもてなしという言葉は平安の頃、茶の席が茶道などに進化していく時代に生まれた言葉です。そして、茶道とは所作や作法を昇華させて道に至りますが、その目的は客人を良い気持ちにさせることです。そしてその客人の多くが敵対あるいは目的を違える相手でした。
つまり、茶道の究極の目的は美しい所作や作法により相手を良い気分にさせ、こちらにとって都合の良い状況にもっていくためのものだったわけです。
ですので二つ目の説、「表裏なし」のおもてなしは「表裏なし」といいつつ「表裏なしのフリをしている。」というわけ。
上っ面な感じでいっか。
昨今はこの「おもてなし」に色々な定義をつけて「おもてなし検定」なるものが存在しています。
その検定に「六本木のお姉さん達をゲストに紹介する際は必ずアフターOKの根回しをしておくこと。」とかがあるなら是非その検定を受けたいと思いますが、これらの検定はそうではなくどちらかというと「マナー検定」や「サービス検定」に近いものです。
「おもてうらなし」を言葉通りに考えた「おもてなし」ですから「ほどこし」的な気持ちでお客様を迎えようというわけです。
どんな説を推していようがいまいが相手を気持ちよくさせるという行為がおもてなしの一つであるならそれを受ける相手にとっては良いことですよね。
ですので、真相はさておき相手にとっていい事なんだからまあいっか!という結論に至りました。(結局語源どうでもいい説!!)
ウェディングで出来るおもてなし
色々書きましたが肝心なのはこのおもてなしの心をもってあなたの結婚式で何をするか?ということです。
そもそもあなたはゲストに対し、あなたが一番嬉しいこのウェディングというセレモニーのためにお仕事を休んで頂いたり、わざわざ飛行機に乗って来て頂いたりと失礼極まりありません。挙句の果てにやれやれと会場に到着したゲストに対し「私シアワセでーす!」とのろけてみせ、ゲストの女子には着ることを許さない「純白」のドレスをこれでもかを見せつけるのです。(言いかえると恐ろしい儀式ですね結婚式って…。)
そんなあなたが今更おもてなし?はぁ?ちゃんちゃらおかしいわっ!
というとブログ終わっちゃうので、「すみません、遠くから来て頂いたうえに、私ののろけ話に耳を貸していただき、あまつさえドレス姿を褒めて頂いて・・・。本当に申し訳ないことです。」と謙虚な気持ちをもって先に進みましょう。
わざわざ来て頂いたのに…
まずは「わざわざ来て頂いた」という事について。
平安の頃は今みたいに便利な移動手段はありません。貴族は歩くのより遅い「牛車」に乗って移動です。
そもそもその「いつ来てね!」という約束をするためのお手紙も往復に何日もかかります。
もし訪ねる先が国境いをまたぐような遠方となると命の危険すらありました。
人が人を訪ねるまでの労力が現代とは雲泥の差です。
というわけで、招いた側としては「いや、本当に申し訳ない。」とまず来てくれたことに感謝するわけです。
ゲストが来るであろう時間にちょうどお風呂に入れるように薪をくべ、到着したらまずお風呂で疲れを落としてもらい、一番上等な部屋に上等な着物や香を焚き、ゆっくりひと眠りして頂くわけです。相手に合わせてお酒が好きならお酒を、女性が好きなら女性(フェミニストな皆さんごめんなさい)を用意し、来て頂いたことに最大の礼を尽くします。
はい!というわけで来て頂いたゲストにどんなお礼をしましょうか?
※ちなみに歩くのより遅い牛車に乗っていく理由ですが、一緒に出発した従者が先に到着し、招いた側の主に到着の時間を知らせるためだったという説もあります。招かれた側も気遣いをしていたんですね。
今すでにウェディングにあるもので代表的なものは「ウェルカムドリンク」というやつです。セレモニーやパーティーがはじまる前にゲストに振舞うドリンクですね。
しかしながら、大抵の式場はウェルカムドリンクを出す時間が決まっており「早く来すぎてしまった」ゲストに対しては出してくれません。それどころか「まだ入れねーからその辺で時間つぶしておけや!」と塩対応。「招待状に時間書いてあるでしょ?時間通りにこないあんたが悪い!」と言わんばかりです。ホテルだとカフェやラウンジで時間をつぶせますからいいものの、それらがない式場だとゲストは見慣れぬ街をウロウロすることに。
あなたが選んだ式場はどうですか?もし、早く来すぎてしまったゲストに対している場所がないなら何か手を打たなくては!
相手が「うむ、あまり早く着くと準備もあるだろうしかえって迷惑だろう。」と平安貴族のように気を遣ってくれる人ばかりなら良いのですが、飛行機や新幹線の時間がそうそうちょうど良い時間ってわけでもありませんし、迷って遅刻するくらいなら早く行こうと思う人もいます。
かと言って招待状に「待つ場所ないから時間通りに来てください。」というのも(これ、結構あるあるです。)「おもてなし」の心からするとちょっと違うような…。
ですので、早く来てしまったゲストの待つ場所がないなら近くのカフェなどを案内してもらうようにスタッフに伝えておく、あるいは「ここにいいカフェがあるよ!」という地図なんかを用意しておき、スタッフに「これ、二人からです。」と渡してもらうのがいいかも知れませんね。(式場によっては常に準備してくれているところもありますので聞いてみて!)
時を知らせること
さて、遠路はるばる牛車にのって招かれたゲストを次に待っているのが何等かの儀式です。結婚式に限らず元服式や戴冠式、お茶や唄の会なんてこともあります。
その内容によって着る物がしっかりと決められたこの時代は事前に何の儀式が催されるのかを伝えておく必要がありました。そして、その準備は時間がかかるものだったため、儀式がどの刻に行われるかも伝えておかなくてはなりません。
現代のウェディングにおきかえるとどうでしょうか?
何時から挙式、何時から披露宴という情報は伝わっていますが、細かい内容まで伝えることはありません。これはあまり細かくお伝えするのもかえって窮屈だという心遣いでもあるのでバランスが大事だと思います。
ゲストそれぞれによって事情が違うので個別に時間を伝えておくのがベストです。
遠方からくる方にはお開きの時間を。
余興を頼んだゲストには出番の時間を。
二次会の幹事には式場を出れる時間を。
当たり前のようですが、ゲスト一人ひとりをもう一度見直せば、それぞれが気にしそうな時間があることに気付くはずです。この手間ひまがまさに「おもてなし」です。
まあ今まさにチャペルに入場するあなたの横をあわてて通り過ぎる時間に来る友人にはお伝えする時間はなくていいように思いますが…。
宴席
さて、おもてなしの中でも最も大切なことの一つとして「ご馳走を振舞う」という行為があります。この馳走という言葉は「馬で走り回る」ということを指しています。料理と何ら関係ないようなこの言葉ですが、実は招いた客人のために馬で走り回って、よりよい食材を集めたことからこう言われるようになりました。
ここにもわざわざ来て頂いた客人に報いるための心遣いがあったわけです。
例えば、山間部に住む豪族に招かれた客人がその宴席で海の魚が出てきた場合「ああ、わざわざ私のために海まで行ってくれたのだな。」とその心遣いに感謝するわけです。
ウェディングにおいてもこの「わざわざ」が大切です。
アレルギーや苦手な食材を事前にうかがっておいて、その方の食事だけメニューをかえるというのはウェディングにおいてはマストな行為ですが、それ以上にわざわざというとどんな事が出来るでしょうか?
ホテルや式場ではメニューが決まっているのでなかなか思うような事は出来ません。食中毒などの衛生面の問題からも何かを持ち込んで振舞うということも難しそう。
少し後付けになってしまいますが、テーブルに置かれたメニュー表に一工夫して何故そのメニューを選んだかくらいはゲストに伝えてみてもいいかも知れません。
もし、料理の持込やメニューに自由がきくのなら「この日のために、新郎が釣ってきた…。」「この日のために二人で畑を耕して…。」「この日のためにフランスから取り寄せた…。」など頑張ってみるのもアリです。
お土産
さて、儀式に参加し宴席を終え少しばかり滞在した後、いよいよ牛車に揺られて帰路につく平安貴族。
「やあやあ、すっかり世話になったね。」なんて主としばしの別れ惜しんでいると自分の従者が何やらせっせと運んでいます。
米や麦、織物、財宝、馬、牛…。「何もお構いできずに、せっかくだからこれ。」とは言い難い物量で、ひと財産ありそうです。
また、道中気を付けてという意味から国境いまで主の家来が護衛してくれるそう。
この場面だけ見ると招かれた貴族は心づくしのおもてなしを受けて、帰りに贅沢なお土産までもらって…となりますが、実はここに来るための準備につかった費用や労力に比べるとまったく足りていないのです。
さてさて、現代のウェディングにおきかえてみましょう。
皆さんはゲストがつかった費用や労力を考えたことがありますか?
女性であれば、美容室にいきドレスを買い交通費を払いご祝儀をつつむ。費用もさることながら何時間使ったことでしょう。
それに対してあなたが相手に贈るお土産はいわゆる引出物や引菓子。お値段的にはゲストがかけた費用や労力に対して遠く及ばないものです。だからこそ、心を込めて選ぶ必要があるのです。
選び方はこちらのブログを参考にして下さい。
まとめ
謎の言葉「おもてなし」。
何だか分からないけど日本人が大好きな言葉「おもてなし。」
何ならそれだけ言っておけばいいやという言葉「おもてなし。」
肝心なのは「これこそがおもてなし」とかじゃなくて、
相手に対してどれだけ気や心をつかい、時間をつかい、体をつかえるかってことなのかなと思います。
それを相手が負担と思わないようにどこまで伝えてどこまで隠すのか。
これって、やっぱり私たち日本人じゃないと分かりにくい感覚ですよね。
英語でアメリカ人に絶対説明できない!!滝〇クリステルすげー。
そして、せっかくおもてなしの国に生まれたのだからウェディングにもしっかり活かしたいですよね。
まあ、裏で何を画策するかは別として・・・フッフッフ。