結婚式あるある歌いた―い♪
結婚式―、あるーあるー♬
って、あるあるを歌うあの人、最近テレビで見ませんね。
結婚式にもあるあるはあります。
結構多いあるあるが
「人とは違う結婚式にしたい!」です。
様々なサイトを見ると「ワンランク上の結婚式」や「二人らしい結婚式」、「オーダーメイド」や「オリジナル」など、何だか素敵なキャッチコピーが踊っています。
そもそも、人と違うことがしたいなら結婚式しなくてよくね? と突っ込みたくなりますが、
ここで言う「人と違う」は、「今まで誰も見たことがない」ではなく「せっかくだからちょっとは自分達らしいことをしたい。」ということみたい。
この「せっかくだから」って気持ちは分かりますよねー。
例えば、車を買う時も、全く新しい車をオーダーメイドで作ってもらおうなんて人はいなくて、ディーラーさんに行って好きな車種選ぶわけです。で、「せっかくだからシートの色は私の好きなブルーにしてもらおうかな?」となるわけです。
めでたく納車した後、友人と一緒にドライブ。「見て。このシートの色!特別にオーダーしてもらったの!」とあなたは自慢し、「へー。そうなんだ。いいじゃん。で、今日はどこ行く?」と友人はそこを掘り下げてはくれません。
そう、そんなものなのです。
基本ありきでしょ?
さて、そうはいっても「いや、私たちのウェディングはオリジナルでなくてはならぬのだ!」と思っているのなら最早止めません。
が、オリジナルを目指す前に伝統的でクラシカル、つまり「皆がやっている結婚式や披露宴」について知っておくべきでしょう。
ん、何故?
例えばですが、もしあなたが初めて車を買うとして、一般的な車の情報を知らなかったとしたら、
「長距離運転が多いので、シートを替えて欲しい。」
のような具体的なオーダーは出来ません。
「仕事で長距離運転をすることが多いのですが、座り心地ってどうですか?」くらいの質問をするのがせいぜいです。何故ならば、あなたは「一般的な車の乗り心地」を知らないのですから。
そして、「ああ、乗り心地は最高ですよ。何せワンランク上のシートを使ってますから!」とにこやかにディーラーさんに言われて納得してしまうことでしょう。
結婚式の厄介なところは「一生に一回」(くらい?)ということ。つまり「前回こうだったので、今回こうしよう。」ということがなく、大抵が初めて車を買う時と同じなわけです。
というわけで「人と違うウェディング」にしたい二人こそ、「皆がどうやっているか?」を知っておくべきなのです。
伝統的な披露宴の完璧な進行
さて、どうしても「人と違う結婚式」にしたいあなたに、昔ながらのいわゆる「The披露宴」をプレゼンさせて頂きます。
ぷちばけである限り、おそらくこの先プロデュースすることはなさそうなこの伝統的な披露宴が私は大好きです。
お客様のことを思い、運営の効率を考え、分かりやすいストーリーの中に様々な知恵や工夫があり、まだまだ進化できる余地があります。
業界の先輩方が捻りだした素晴らしいプログラムです。(ほめすぎ?)
この伝統的な披露宴は私たちに馴染やすいように起承転結がはっきりしております。
皆さん2時間もののサスペンス劇場は好きですか?私は大好きです。赤い霊●車シリーズとか、法医学●室の事件ファイルとか・・・。
最新のドラマや映画は起承転結がめちゃくちゃ。「結」からはじまったり、「転」がいくつもあったり。二回も三回も見直さないと意味が分からないなんてこともあります。
しかし、このサスペンス劇場たちは頑なにこの起承転結を守っています。まさに伝統。
「起」
披露宴の「起」は、その入場シーンに集約されます。タメにタメた前奏、うやうやしいドアーオープン、大袈裟なスポットライト、ウェディングドレスとタキシードの二人、輝く笑顔!誰もが考える結婚式のシーンそのもの。まさにファーストインパクト!
サスペンス劇場でいうなら、謎の人物が謎の人物に殺害されるシーンです。
「う、やめろ!お、お前は?」とか何とか言いながら崖から突き落とされ、はいタイトル!
「湯けむり殺人事件!OL姉妹の入れ替わりトリック!●●シリーズパート12!」(ほとんどタイトルで全部説明してない?)
「承」
場面は変わって、崖の下に警察車両。例のデコボココンビの刑事が登場します。
「ガイシャの名前は●●。」
「遺書もないこと」や、「崖の上で争った形跡がある」ことなどを、やや説明調なセリフで延べ「他殺」と断定しています。
そこへ、何故か?な・ぜ・か・偶然にも出張に来ていた片●なぎさや名取●子演じる主人公が居合わせます。そしてそのパートナーも。
「先生?何故ここに?」とかなんとか刑事が聞いて、登場人物の関係を一気に説明します。
視聴者は前シリーズを見なくても「ああ、この先生のこと、この刑事が好きなのね。」とか「先生とパートナーはお互いに好きなんだけど微妙な関係なのね。」など。
シリーズを見続けているファンには説明不要のお馴染みシーンです。
披露宴におけるこの「承」のシーンは、入場後に繰り広げられるあの退屈な時間です。
まずは新郎新婦の紹介。
「新郎の太郎さんは、19●●年●月●日に・・・。」ではじまり「優秀な成績」の経歴や「リーダー」や「ムードメーカー」だった活動について紹介するあれです。
ゲストは「いや、そんなにムードメーカーってわけでも…。」などと思いながらうんうんとうなずいて聞いています。
それが終わると今度は「新郎の上司」や「新婦の上司」が出てきて30%増しくらいの仕事っぷりや対して面白くもないエピソード、なんなら会社の概要まで説明する「祝辞」。
グラスに注がれたシャンパンの気泡が消えかかった頃、ようやく「乾杯のご発声」という謎の大役を任された「新郎の上司でもなく、新婦の上司でもないが、お世話になった人」や「もともとは祝辞を任されるはずだったが、急遽部長の出席が決まったのでその座を譲った課長」などが、祝辞とかぶり気味のスピーチを披露し、シャンパンがもう目に見えてぬるくなった頃にようやく「乾杯!」となるわけです。
ここまでの一連の流れを「披露式」といい、サスペンス劇場の崖下の一幕と同様に一気に二人がどういう人なのかを紹介してしまう大変合理的なシーンなのです。
「転」
「このOLが絶対犯人だよねー!」と、
視聴者の推理が、そこそこ有名な女優演じるこのOLが犯人であると断定しそうな頃合いで、 OLさんが部屋で首を絞められたりして殺害されてしまいます。(大抵の視聴者は「やっぱりねー。」と思っている。)
初見の視聴者が「え!」と驚くこの場面転換こそが披露宴における「お色直し」です。
そう、いったん中座退場した二人がお着替えをして戻ってくるあれです。
ピンクのドレスを着た新婦を見てゲストが「かわいー!」と歓声をあげ、ちょっと堅かった雰囲気がやわらかな雰囲気に変わっていきます。(新郎新婦の中座中にお酒が入ったということもあるでしょうが…。)
友人のスピーチや余興などは転の後のまさに余興です。一部の視聴者に人気のヒロインの入浴シーンやスポンサーがらみの商品紹介(主人公とパートナーが推理しながら急に缶コーヒーを飲んだりするシーンです。)みたいなものです。
「結」
「ま、まさか●●ちゃんが?」
などと一連の推理を説明気味に披露した後、主人公は真犯人を追って車を走らせます。
缶コーヒーを飲みながら説明しきれなかった推理の補足は車の中でパートナーと電話しながら。
そして…。
「やめなさい!」
視聴者には概ねこいつが犯人だろうと予測されていた殺されたOLの妹が崖から飛び降りようとするのを主人公が必死で止めます。
「ほっといて!あなたに私の気持ちなんて分かるわけない!」
なんてOLの妹が一歩踏み出そうとすると。
「いいえ。わかるわ!」
「え?」
ここで主人公の過去のつらい話が始まり、OLの妹が泣き崩れます。
「いいのよ、生きて。生きて償いなさい。」
なんて、OLの妹を抱きしめた主人公が言う頃にようやくパートナーやデコボコ刑事コンビが到着。
「わたし、生きてみます。」
手錠を掛けられパトカーに乗り込む寸前、犯人であるOLの妹が主人公に向かって前向きな一言。主人公はゆっくりうなずくのでした。
場面変わっていつもの事務所。主人公とパートナー。
「あー、今回の事件も無事に終わったわね!。」
「●●ちゃん(犯人)も、情状酌量の余地があるらしいね。」
と、OLの妹も少し救われたことを匂わせ、
「結局、温泉入りそびれちゃったわねー。」
「え、俺は入ったよ。」
「ひどーい、私に黙ってー?」
「ははは、今度は一緒に入ろう。混浴で!」
「このエッチ―」
とかなんとか、本当にどうでもいいイチャイチャで最後は終わります。
はい、この結こそ、祝電披露・新婦のお手紙朗読・花束贈呈・謝辞・お見送りです。
もの凄くわかりやすいお涙頂戴の主人公の「いいえ、わかるわ。」の後の過去話。
もの凄くわかりやすく泣ける新婦のお手紙朗読。
そして、「わたし、生きてみます。」という感動的なセリフ。
「二人で頑張ります。」という感動的な新郎謝辞。
ああ、なんて分かりすいクライマックス。
いかがですか?
私たち日本人にぐっと突き刺さるこの完璧な「起承転結」。
これでもあなたはまだ「オリジナル」じゃなきゃだめですか?
伝統的な披露宴に隠された知恵
伝統的な披露宴はその進行だけでなく、イベントひとつひとつに意味があったり理由があったりします。
ケーキカット
人と違うウェディングを希望される新郎新婦から最も嫌われるこのセレモニー。
「夫婦はじめての共同作業って・・・。」「なんでケーキを唐突に切るの?」など確かに不思議。元々は小麦で作ったお菓子を新郎新婦の頭の上で割って、落ちた欠片をシアワセのお裾分けとして家族や友人が拾ったことから…。と、出自じたいも意味不明なこのセレモニー。
そもそも数十年前は100人以上が出席することが当たり前だった披露宴。下手すると新郎新婦が近くにくることがなく、折角出席したのに二人の写真を撮れなかったというゲストにシャッターチャンスを与えるためのものでもありました。
また、ケーキカットで一旦立ち上がった新郎新婦がその後すぐに中座退場をすれば、唐突感もなくスムーズ。というような進行もかねています。
お色直し
前述したように「お色直し」は披露宴の雰囲気を大きく変える役割を担っていますが、スムーズな進行上大切なのはお色直しの為に二人が中座退場している時間です。
披露宴において大切な事のひとつに「お料理」があります。新郎新婦が悩みに悩んで決めたメニュー。せっかくですからちゃんと召し上がって頂きたいですよね。
しかし、スピーチ・余興・ゲームなどがひっきりなしに行われる進行だった場合、ゲストの中には「誰かがスピーチしている間にご飯を食べるのは失礼にあたる。」として、なかなか食事が進まない人がいます。
そう、披露宴には何もしないで食事をすすめてもらう時間が必要なのです。
「二人が中座している間、ゲストが退屈しないように。」などと動画を流したりする場合がありますが、これはやめておいた方が良いかも知れませんね。
お手紙朗読からの花束贈呈
クライマックスのこのシーンにも動線が考えられています。
お手紙朗読がはじまると両家両親はメインテーブルの反対側の退場口に並びます。
ゲストをはさんで新郎新婦と両親が向き合うことになります。
ゲストは大抵横向きになって、新郎新婦と両親が両方見えるような感じに座っています。
この、位置がポイントです。新郎新婦と両親に挟まれている状態だと、静かにお手紙の内容に集中しやすくなります。
試しにメインテーブル前に両親を立たせてメインテーブルまわりでお手紙朗読や花束贈呈をしてみて下さい。メインテーブルから遠い席のゲストは聞いてなかったり、大声で笑ってたりします。
手紙を読み終わり、花束を持って新郎新婦が退場口に進むと一緒にゲストの目線も退場口へ。そして、退場口前で新郎父の謝辞や新郎の謝辞。そのまま深々と頭をさげて振り返るように退場です。この退場動線が短いのも良い所のひとつ。
涙でボロボロになってしまったお嫁さんのメイクを素早く直すためにさっさと退場できるのです。
また、この一連のセレモニーでゲストの目線は退場口に向いており、暗に「お帰りはあちら」と促しています。披露宴がお開きになった後、いつまでもゲストが会場内にいると次パーティーの準備が出来ません。これも沢山の披露宴をこなすホテルや式場のアイデアですね。
まとめ
いわゆる「The 披露宴」。
いかがでしたか?
まだまだ、語りつくせないくらい素敵な言い伝えや合理的なイベントがあり、今回はその一部をご紹介しました。
少し前の時代、こういった話はホテルや式場側が知っていれば良いノウハウで、そのことを知らない新郎新婦を上手に説得しながら、そのノウハウにはめ込むような打合せが多かったように思います。
現代は情報の平均化時代。どの分野においてもプロと素人との情報収集能力はかわりません。(もちろん、プロにはプロのリソースはありますが…。)
新郎新婦の情報量が格段にアップし、ウェディングプランナーとの知識が平均化することは新郎新婦にとってはとても良いことです。何故ならば、ウェディンプランナーは知識というノウハウ提供しなくてよくなり、よりプランニングすることに集中出来ることになるからです。
さて「自分達らしい結婚式」にしたい二人こそ、「自分達らしくない、いわゆる皆がやってる結婚式」について知るべきというのが本稿のテーマでしたが、「自分達らしい結婚式」にするにはもう一つ大きなポイントがあります。
それは「自分達らしい」って何?ってことです。
残念ながら長くなりすぎましたので続きは次回に!!